古墳はパワースポットだった?

上石津ミサンザイ古墳

古墳とは古代の豪族や有力者が葬られている大きなお墓です。

でも大きいと言ってもお墓でしょ。と思うかもしれません。でも古代人の信仰と大きく関わった施設でもあったのです。古代人にとっては聖地でした。いえ平安時代の初期までは聖地だったのです。現代風に言えばパワースポットです。

現代人はお墓は怖い場所。不吉、汚らわしい場所と考えがちです。でも本当はそうではありません。古代にはお墓は聖地だったのです。のちの神道にもかかわる祖霊信仰の祈りが古墳には込められているのです。

古墳がパワースポットと言われるわけを紹介します。

目次

祖先が子孫を守るという考え

古墳はただのお墓ではありません。亡くなった首長を神として祀る場所でした。
稲作がはじまったのとほぼ同じ3000年前ごろ。そのころから祖霊信仰がありました。

「亡くなった人の魂が子孫を守ってくれる」と考えられたのです。

人は死んだら神になるというのが日本人の古くからの考えです。

それぞれの家では故人の魂は家を守る神になりました。
豪族の首長は死後は一族を守る神になると考えられました。
ひとびとの集団が大きくなると、神となった首長の魂はその集団や土地を守る神として力を発揮すると考えられました。守る対象が子孫だけでなく、そこに暮らす血縁関係のない人や場所にまで広がったのです。

大きな力を持つ神ならその神を祀るそれにふさわしい立派な施設が必要です。

古墳は儀式を行う聖なる場所

首長の墓はどんどん大きくなりました。首長の墓は単なる埋葬施設ではなく儀式の場所にもなりました。古代には人々の平和と繁栄を願う儀式が墳墓の上で行われました。

3世紀頃には墓はさらに巨大化。古墳になりました。

古墳はそれ自体が神になった首長を祀る場所であり祭祀の場所でした。

5世紀頃には400mを超えるような巨大な古墳も造られました。埋葬や祭祀の場所という目的の他にも王の力の大きさを誇示する目的もあったようです。しかし6世紀ごろから巨大な古墳は造られなくなりました。埋葬場所、祭祀を行う場所としての墳墓は造られ続けます。

このころは神となった死者の魂は墓にとどまっていると考えられていました。遺体・遺骨が御神体なのです。現在も「遺骨を粗末に扱うとバチが当たる」と言われるのはこの考えが残っているからです。

人の遺体は朽ちますが魂は残ります。山を御神体として崇拝するように、やがて古墳そのものが神の依代のようになりました。

飛鳥時代や奈良時代、平安時代の初期になっても祖霊信仰は受け継がれ皇族や豪族の墳墓では祭祀が行われました。また、地域の守り神となった死者の魂は埋葬場所とは別に儀式の場所が別に造られました。最初は儀式のときにだけ祭壇が造られましたが、後に常設の建物になり神社になります。

古くからある神社はたいては古代の聖地に造られています。古墳は聖地と考えられていたので、古墳の上に社殿が建てられたり、古墳のある場所に神社を作ることが場合がありました。現在でも岡の上に神社があると思っていたら古墳の上だった。とか境内に古墳がある神社は存在します。古墳が聖地だったことの証です。

死の穢れを嫌いだした平安の人々

やがて平安時代の中頃から墳墓で祭祀は行われなくなります。平安貴族は死の穢れを極端に嫌うようになったからです。中央では戦乱のない時代が続いたこと、仏教や道教、陰陽道などの新しい思想が広まったことなどが影響しているようです。また平安時代の後半は戦乱のない時代が続き、貴族たちは優雅な生活を満喫していました。その一方で平和な生活が乱されることを怖れ死を極端に怖がったのです。

墓は死の穢れがのこる不吉な場所というイメージが産まれました。

平安時代の人々の死への怖れ方は徹底していました。死の穢れは現代人が放射能を恐れるのと同じくらい怖いものだったのです。

平安貴族の心は、平和な時代に暮らし滅多なことでは死は訪れず、平穏な生活が当たり前と思っている現代の日本人と似ています。

現代人がお墓を怖いと考えるのは平安貴族の価値観が民衆に広まって残ったからです。しかしその考えは平安貴族の異常な怖がり方を引きずっているだけです。本来は祖先が眠るお墓は怖い場所ではありません。

確かに恨みを持って亡くなった人だったり無縁仏になった人の魂は生きている人に悪い影響を与えるかもしれません。でもきちんとお祀りしていれば害はないものなのです。

古墳も同じです。現代では古墳では儀式は行われていません。忘れ去られた古墳も多いです。でも皇族の墓に指定されている古墳は宮内庁が管理して保存しています。神社の境内にあって大切に保存されていたり、現在でも神事に使われる古墳もあります。そんな古墳は現在でも聖地としての役目を保っているのです。

現在でもいくつかの天皇陵には鳥居が付いています。お墓に鳥居があるのは不思議に思うかもしれません。でももともとは古墳は故人の魂を神として祀る場所だったのですから不思議ではないのです。

きちんと維持管理されている古墳は聖地としてのパワーを保っているといえます。

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