ペンタグラム(五芒星)が国旗に多い理由を考えてみると

世界の国旗にはペンタグラム(5つの角がある星・五芒星)を採用している国が多いですよね。どうしてでしょうか?気になったので考えてみました。

しばらく前のことです。ある「国旗の専門家」の方から連絡をいただきました。そのとき五芒星のもつ意味についていろいろ考える機会がありました。

最終的には「なぜ国旗に五芒星が多いのか」については結論は出ませんでした。でも有意義な意見交換ができて大変貴重な機会をいただきました。

その経験をもとに神秘主義的な解釈ではなく「どうして国旗にはペンタグラムが多いのか」を私なりに考えてみました。その一部を紹介します。

あくまでもここに書いたのは私の個人的な意見です。学説的に正しいかどうかはわかりません。ご了承ください。

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国旗にペンタグラム(五芒星)が多い理由

近代国家が国旗をつくるとき。先行したヨーロッパ諸国はできるだけ複雑な図を避けて色の塗り分けで表現しました。でも視認性が高い色の塗り分けパターンは限られます。ヨーロッパ諸国よりも後から国旗を作った国は色の塗り分けが使いにくなりました。

となると何か図形を入れて区別するしかありません。

さらに図形が採用される理由については大きく分けると
・デザインの良さ。
・図形の持つ意味。

があると思います。

丸・三角・四角では単純すぎるので物足りない。でもそれ以上の多角形だと遠くから見ると角が潰れてよくわからない。

◯を旗の中央に配置すると日本の国旗になります。これはシンプルが美しいと感じる日本独特の感性でしょう。もちろんこれは美しいと思います。

でも諸外国の美的感覚はそうではなかった。

となると視認性がよくて目立つ図形はなにか?となると単純な多角形の組み合わせでできる図形=星型が候補になると思います。

五芒星は簡単でわかりやすい

視認性とデザイン性の良さでペンタグラムは他の星型図形よりも使いやすい図形だったのだと思います。

私はデザインの専門家ではないので詳しいことはいえませんが。

五芒星は幾何学図形のなかでは高度なものではなく、容易に描ける方だと思います。

五芒星は一筆書きできます。六芒星、八芒星など他の星型図形に比べても描くのが簡単です。

黄金比や直線性にこだわらなければ子供でも描けます。雑に描いても星に見えます。

五芒星は簡単に描けるのにデザイン性に優れているのです。
これが他の星型図形にはない利点だと思います。

という内容の意見を先の「専門家」の方に申し上げたところ、「正五角形は高等学校の幾何学で習うものなのに簡単だからというのは解せない」というご意見でした。

確かに正確に描こうとするとそれなりの技量が必要です。でも歪んでいても角度が違っていても、5つの角がある「お星さま」は小学生や幼稚園の図画でも描くことができます。そういった意味での簡単さがあると思うのです。

国旗が国章や紋章と大きく違うのは「国民のためのデザイン」だと思います。国旗は権威や権力者のものではなく、国旗は国民が理解できるものにしないと意味がありません。中世の紋章のように複雑なデザインにしようと思えばできるのに国旗はあえてしていません。

それは視認性と同時に国民のわかりやすさを重視しているためだと思います。だからどの国もできるだけ単純化しています。(そうでない国もありますが)

世界では幾何学は教養のひとつ

私は日本と諸外国では幾何学についての基礎的な知識が全く違うと感じています。

たとえば、中世ヨーロッパの「自由七科」では「幾何学」は科目のひとつです。幾何学は数学とともに論理的思考・科学の基礎になりました。

ヨーロッパ文明 は遡れば古代ローマ・ギリシアに源流があります。幾何学が発展したのは古代ギリシアとされています。でも幾何学はペルシャ、インドでも発展しました。むしろギリシアの 幾何学もメソポタミア~ペルシャのオリエントの影響を受けていると思います。

インド発祥の曼荼羅ももとはかなり幾何学的なデザインです。日本では曼荼羅は具体的な神仏の絵が並ぶものとして発展しましたが、チベット仏教 の曼荼羅は幾何学的なインド曼荼羅の名残があります。

そうした欧米・中東・インド地域では五芒星よりも高度な幾何学図形がいくつも生まれました。

中南米やアフリカも欧米の植民地化を経験したので影響はあると思います。

世界的にみれば五芒星は複雑なデザインではないのです。

五芒星は国家が使いやすい星だから

次に、星型の持つ意味から考えてみたいと思います。

星のデザインには様々なものがあります。
五芒星には大きな特徴があります。
それは、五芒星は古来より使われているにも関わらず、特定の宗教・民族との結びつきが深くないデザインなのです。

民間信仰や伝説レベルでは様々な意味付けがされました。魔除けもその一つです。

・四芒星(十字星)は十字をイメージするのでキリスト教を彷彿とさせます。

・六芒星はユダヤ。中世までは六芒星はイスラムやキリスト教絵画でも使ってました。でもユダヤ復興運動後は六芒星はユダヤの象徴になりました。イスラム・キリスト教社会ではあまり使わなくなったようです。

・八芒星は別名 イシュタルの星やイナンナの星とよばれます。

メソポタミアでは女神イシュタルもしくはイナンナを象徴する星でした。メソポタミア神話と関わりのある星です。

メソポタミアやペルシャがイスラム帝国に征服されますが。その後も中東では八芒星は様々なモチーフとして用いられました。八芒星とイスラム教は関係ありません。でも現在の中東ではイスラム圏になってるので八芒星はイスラム的・中東的なイメージをもたれることはあると思います。たとえば八芒星の描か れた絨毯を見たら「ペルシャ絨毯」を思い浮かべる人が多いはずです。

七芒星・九芒星はそれこそ描くのが難しいです。

五芒星はヨーロッパでは魔術のシンボルとして使われたり、民間信仰の中で魔除けに使われました。キリスト教の一部の人達の間ではシンボルになったこともあります。でも全体的にはシンボルとみなされていません。

宗教とまったく関係ないといえば嘘になりますが、少なくともユダヤ教・キリスト教・イスラム教・仏教など世界的な宗教では正式なシンボルとしては採用されていません

庶民レベルでは知られているのに世界的な大宗教・特定の民族のシンボルにはなっていません。五芒星を見て特定の宗教や民族を想像するのは難しいのです。

特定の宗教に依存しない国家。
さらに、神も迷信も信じない唯物論者にとっても魅力的だと思います。

古代から使われているのに宗教や既存の権威との関係が薄い。この理由があったからこそエスペラントは「緑の星」として五芒星をシンボルに採用しました。アメリカやソビエトも採用しやすかったのだと思います。

アメリカとソビエトは自由主義と共産主義を掲げて世界を二分しました。でもヨーロッパの王侯貴族や既存の権威や宗教とは関係ない国を作る。という目的は同じ、方法が違うだけだったのです。

それに幾何学は迷信ではなく論理的数学的な学問です。五芒星は黄金比が成り立ちますから星型図形の中では理論的に最も均整の取れた形になるのです。

五芒星はわかりやすく新規の勢力が使いやすい

つまり。

視認性がよい星の模様の中で特定の民族・宗教権威と結びついていない。
昔から知られている形である。
庶民レベルでも知られている形である。
丸や三角よりも複雑なので知的な雰囲気もする(現実に五角形は高等幾何学だと思ってる人もいるのですから)。
でも比率や角度を気にしなければ子供でも描ける。少なくとも五芒星には見えるレベルの絵は描ける。

このような星は五芒星だけです。

近代になって国家がシンボルを作ろうと考えたとき。
伝統のない国、無宗教を標榜する国家にも都合がいい形です。
特定の国家が独自の意味をもたせることも容易です。

以上が私の考える五芒星が世界共通になった理由です。

もちろん。これだけではありません。もっと直接的な理由があるはずです。

私がこの記事で書いたのは直接的な理由ではないかもしれません。むしろ選択の下地にある意識。人々が潜在的にもっている意志のようなものです。

でも今回のところはここまでにしておきましょう。

繰り返しますが、ここに書いたのは私の個人的な意見です。学説的に正しいかどうかはわかりません。専門家の方の説でもありません。

さてさて。実際のところはどうなのでしょうか?

 

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