龍の伝説は世界各地にあります。日本にも龍神様がいます。
日本の龍神信仰は世界の龍、ドラゴンとは違う性格があります。
そこには日本独自の自然崇拝が深く関係しているからです。
日本の龍神について紹介します。
龍神信仰の前は蛇神信仰
古代日本には龍神信仰はありませんでした。弥生時代の後半になって古代中国より龍が伝わりました。
それまでの日本には蛇を神とあがめる信仰がありました。日本の龍神信仰のもとになってるのが蛇神信仰なのです。まずは蛇神信仰をみていきましょう。
現代では蛇を嫌う人もいるのではないでしょうか。手足がないのに生きている、という見た目の異様さから生理的に受け付けないという人もいると思います。西洋的な価値観から蛇は悪と刷り込まれているかもしれません。
でも縄文時代や弥生時代は蛇は「カミ」でした。日本人の心の奥底には蛇を神様だと思う心があるんですね。
不老不死のシンボル
古代日本では蛇は善でも悪でもありません。
蛇は脱皮を繰り返すので再生と不老不死のシンボルなんです。原始時代、世界各地に蛇を再生や不老不死のシンボルとして信仰する地域がありました。日本もそのような地域のひとつです。
豊穣神としての蛇神
蛇はネズミを食べます。そのため古代の人は蛇を稲作に必要な「豊穣の神」と考えました。
稲荷神が流行してからは稲荷神に置き換わることもありましたが。稲荷神と一緒に白蛇の神を祀っているところもありますよね。あれは蛇が豊穣の神だった名残なのです。
そうです。蛇は豊穣の神だったんです。蛇の脱殻を財布に入れるとお金が増えるという民間信仰も、蛇は豊穣神だったからです。現在でも白蛇は財運の神として人気があります。
各地の白蛇伝説なども蛇が神聖な生き物という考えのあらわれです。「白い」というのは色が神聖なという意味もあるのですが、「目に見えない」という暗示でもあります。霊的な存在だから色が付いていないんですね。
水の神
蛇神は水の神でもありました。蛇は水中で暮らす生き物ではありませんが、水の上を自由に泳ぎます。日本の蛇は乾燥した岩場よりも草木の生い茂る湿気のある場所を好みます。田畑や沼にもよくいます。そのため日本では蛇は水と関係のある生き物だと考えられました。
水は人間生活に必要なものです。作物の収穫に直接影響します。稲作文化の日本では水の神は重要な神様でした。
そこで古代には蛇神は水の神と考えられることもありました。
以上のような理由で日本各地に蛇を神として祀る蛇神信仰がありました。
三輪山の大物主は蛇の姿をした神様です。日本の蛇神はずっと蛇の姿をしているのではなく人間の姿に変身することができます。大物主も水の神としての性格があります。
日本にやってきた龍
弥生時代の終わりころ古代中国から龍が伝わりました。
古代中国では龍は水の神、財運の神でした。古代中国の龍も蛇の信仰がもとになってます。インドのナーガのイメージが重なって龍になったのです。
日本では古代より信仰されていた蛇神、水の神は龍と同じものだと考えられました。
龍神は仏教の伝来とともにさらに広がりました。仏教には龍王がいます。龍王のもとになったのはインドのナーガ。龍のモデルになった神様です。
日本では雨乞いは僧侶の仕事にもなりました。仏教の広がりとともに龍神伝説も広がりました。
外国の神を取り入れて日本の神の一部にしてしまうのは日本ではおなじみの考え方です。龍もそうして日本の神の一員になりました。
日本に伝わった龍は独自の進化をとげました。中国の龍は形が決まっています。日本ではとくに決まっていません。デザイン化されるときは中国の龍に似た形にされることは多いですが描く人によって少しずつ違います。
主伝説
日本には「ぬし」とよばれるものがいます。
山、川、泉など。神聖な場所にはそこを守る神様がいると信じられました。もともと自然界のいたるところに神様がいるという自然崇拝が日本人の信仰の原点です。
場所にはその場所の神様がいるのです。
現在でも古くから住んでいる大きな魚を「川の主」「池の主」と呼んだりするのはその名残なんです。
龍神は水の神様ですから川、池、滝など水のある場所を守っている主と考えられました。
主の怒りをかうと不幸が訪れるのも古代の自然崇拝の名残ですね。龍神の住んでいる泉や池、洞窟に、石や鉄を投げ込んだり、水を汚したり、月経中の女性が入る(血で汚す)と主が怒って祟りがおきるといわれます。
もともと日本の神様は自然を神格化したものでした。恵みと恐れが一体になったのが日本の神様の特徴です。
日本各地の主伝説と結びついた龍神はさらに広まりました。
日本の龍とドラゴンの違い
東洋の龍と西洋のドラゴンは似ていても全く違うものです。西洋のドラゴンが怪物や悪魔のイメージで語られるのに対して、東洋の龍は神のような高貴な生き物です。
でも日本の龍は他のアジア地域の龍ともちょっと違います。
中国では龍は神(天帝)の使いです。龍神は神様の乗り物という考えは中国の考え方です。仏教でも竜王は仏に仕える眷属でした。
でも日本では龍神は神様そのものです。日本の龍神は水神やその場所を守る主が形を変えたものだからです。人の形をしていないからといって粗末にあつかってはいけません。
外国と違って日本の神様は絶対的な存在ではありません。自然のなかにある身近な神様だからです。日本各地の伝説には人と恋におちる龍神もいるほどです。人に助けてもらった龍神の伝説もあります。その一方で龍を怒らせて命をとられた伝説もあります。
龍を怒らせた天狗が龍に命を奪われるというお話もあります。空を飛び神通力を持つ天狗でも、怒った龍には勝てないのです。
龍神との約束を破った人間が命を奪われるとか、村に水害が起こるというお話もあります。
だから龍神様を怒らせてはいけませんよ。龍神様は人の生活を豊かにしてくれるありがたい神様ですが、怒らせると怖いんです。
「神は常に人を助けてくれる存在」という考えは日本の神様には通用しません。
日本の神様は自然の力そのものだからです。自然は善でも悪でもありません。時には優しく時には厳しいものです。怖がる必要はありませんが敬意をもって接したほうがよいですね。
コメント
コメント一覧 (5件)
素敵な記事をありがとうございます!
蛇が苦手でしたが、これからは見方を変えようと思いました。
また竜神様に対する心の在り方も変わりました。
神様という存在をイマイチ分かっていなかったのですが、ふと興味をもって検索した竜神のこの記事によって、富や自然に対する感謝の心を向けるべき対象なのだと受け取りました。
特に「善でも悪でもない。自然の力そのものであり、優しく厳しい」という内容が心に残りました。
信じるとか信じないとか、助けてくれるとかくれないとか、願いを叶えてくれるとかくれないとかではなく、竜神様に敬意をもって心の中で感謝を示していこうと思います。
やえこさん、こんにちは。ありがとうございます。少しでも理解の助けになるとうれしいです。日本の龍神は古代から日本人が信じてきた神様の代表です。分かりづらいところもあるかもしれませんが、自然の力そのものだと思って感謝したいですね。
中国では、髭がある鯉が
険しい滝を登ってなるのが龍なのでは。
で、その滝が登竜門と呼ばれているし、
そういう設定のハズ。
色々さん、こんにちは。
後漢書に載ってる
竜門とよばれる滝を鯉だけが登ることができて竜になった
という故事のことですね。
登竜門の伝説は竜という存在があって後から作られた故事ですね。竜の起源はもっと古いです。
中国の竜伝説についてはこちらをご覧ください。
https://kaiun.sseikatsu.net/ryuu/
坂田恵子19880904
宇宙神様の御子です。
龍神と自然神が大好きです