東洋の龍と西洋のドラゴンの違い・なぜドラゴンは悪者にされてしまったの?

世界には竜の伝説がたくさんあります。地域によってそのイメージはさまざまです。

東洋では龍、インドではナーガ。西洋ではドラゴンとよばれます。

龍やナーガが神や神に仕える眷属ナノに対して、ドラゴンは神に敵対する怪物や悪魔であることが多いです。

東洋の龍とちがって、どうして西洋のドラゴンは神の敵になったのか紹介します。

目次

竜の伝説は再生と水への信仰から

世界各地にある竜の伝説。竜は蛇を神格化したものです。ワニとか他の生物のイメージが入ってることもありますが。基本は蛇のイメージです。

なぜ蛇が神になったのでしょうか?

蛇は不老不死、再生の象徴と考えられたからです。

蛇は脱皮をして成長します。古代の人々は、古い肉体を捨てて新しく生まれ変わるのだと考えました。蛇は冬眠します。ある期間大地の中へと戻り、再び地上に戻ってきます。これを見た古代人は蛇は再生と蘇りを繰り返す生き物だと考えました。

脱皮や冬眠をする生き物は他にもいますが、蛇ほど見事に原型を保った皮を残して脱皮する脊椎動物はいません。

古代の人々は蛇を不老不死、再生能力を持った特別な生き物と考えたのです。

蛇は様々な場所に住んでいます。水辺や湿地に住むことが多いです。不老不死の生き物は水の神と考えられるようになりました。

蛇の神は様々な生き物のイメージを取り込んで神にふさわしい姿に変化します。それが竜なのです。

世界中の多くの地域で竜は水の神、水の精霊になりました。

神として崇められていた竜神ですが、あるとき神の地位を脅かす事件がおこりました。

竜が神の敵になった瞬間

その事件がおきたのは古代オリエント。

オリエントは現在の中東になります。世界四大文明のひとつメソポタミア川周辺の文明です。世界で最も古い文明ともいわれます。オリエントには様々な民族がいます。いくつもの国ができては滅びてを繰り返しました。

その中でもとくに古いのがシュメール人の神話です。

シュメール神話ではティアマットとよばれる竜の姿をした女神が登場します。シュメール神話では世界の始まりに登場したのは淡水の神アプズーと海水の神ティアマット、霧の神ムンムーでした。ティアマットの体は水で出来ています。水の神だったのです。

ティアマットとアプズーはたくさんの神を生みました。しかし神たちは騒がしく、アプズーは我慢できなくなりました。アプズーは神たちを殺そうとしましたが、ティアマットは反対しました。しかし、その計画を知った神たちによってアプズーは殺されてしまいます。

夫を殺されたティアマットは復習を考えます。そこで一人で11の怪物を生み出しました。神達はマルドクームを王にして戦いを挑みます。

マルドゥークはティアマットの軍団を倒し、ティアマットも殺しました。ティアマットの死体を使って世界を作ったのです。

こうして竜の神は、新しい神に倒される存在になったのです。

おそらく竜の神を信仰していたオリエントの先住民族をシュメール人が滅ぼして新しい国を作ったことを意味しているのでしょう。

その後、シュメール文明も滅びましたがその神話は受け継がれました。

ドラゴン=悪を決定づけたユダヤの伝説

オリエントの神話を受け継いだ民族の一つに古代イスラエルの民がいます。

古代イスラエルにはたくさんの神がいました。戦いの神ヤハウェもそのひとつです。

ヤハウェはやがて神の王となるのですが、ヤハウェはテホムという水でできた怪物を倒して世界を作ったとされます。テホムはティアマットのイメージそっくりなのです。

その古代イスラエルの国は滅び、イスラエルの民は放浪したりエジプトに支配されたりして苦難の時代に突入します。ヤハウェを唯一の神とするユダヤ教が産まれました。

そしてユダヤ教からキリスト教が産まれます。

神の敵・竜という考えはシュメールからユダヤ、そしてキリスト教に受け継がれました。キリスト教ではレヴィアタンという海の怪物が登場します。世界の終末には神によって滅ぼされる存在です。レヴィアタンも龍の姿をした海の怪物なのです。

こうしてドラゴン=悪のイメージは固まりました。

キリスト教が普及したヨーロッパでは竜は神の敵、怪物のイメージが定着したのです。

キリスト教国には様々なドラゴン退治の伝説がありますが、ティアマット・テホム・レヴィアタンの影響を受けた怪物として描かれます。

 

竜は優しさと恐ろしさを持った神

 

それに対してキリスト教の普及しなかった東洋では竜は神や神のような存在のままでした。中南米にも蛇の神の伝説があります。

竜は自然を神格化した神でもありました。自然災害のひょうげのとしてインドではヴィリドラ、日本ではヤマタノオロチなどがいます。神にもなるし恐ろしい存在にもなる。それが竜神なのです。

 

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