龍:最高の霊獣の姿と能力、皇帝のシンボルになった龍はなぜ凄いのでしょうか

龍

龍とは古代中国の伝説上の生き物です。神聖な生き物、霊獣の中でも最も高貴で尊い生き物だとされました。この記事では霊獣としての龍を紹介します。

龍が現れると世界が大きく変わるいわれました。良いことなのか、悪いことなのかはわかりません。

自然に対する崇拝や畏怖から生まれたと考えられています。

龍の信仰は古く、紀元前17世紀の殷王朝(商王朝ともいいます)の甲骨文字では龍を尊さの意味で使っていました。4000年近く前にはすでに龍は尊い生き物だと信じられていたようです。

古代は祖先の霊だった龍

古代中国。統一王朝ができるよりも更に前。人々が部族ごとに分かれて生活していた時代までさかのぼります。原始時代です。当時はそれぞれの部族は祖先の霊を祀っていました。祖先の霊は神として崇められました。これを祖霊信仰といいます。祖霊信仰は原始の時代には世界中どこにでもあった素朴な信仰です。

人々は祖先の霊はある動物の姿をしていると考えました。民俗学ではこの習慣をトーテミズムといいます。生き物をトーテムといいます。現代でも少数民族の中にはこのような信仰をしている人達がいますね。

その生き物(トーテム)を殺したり食べたりすることは禁止されていました。

古代中国には大蛇をトーテムにする部族がいました。苗族の祖先とされ、黄河流域で大きな力をもっていたといいます。ここでも水と大蛇(龍)は深く関係しています。彼らは周辺の部族を吸収して大きな勢力になりました。周辺の部族のトーテムをとりこみました。蛇のようだけれども蛇ではない独特の生き物の形になりました。それが龍です。龍は民族の統合の象徴になったのです。

龍は祖先の霊であり神だったのです。

しかし龍をトーテムにする民族は、別の商民族(殷ともいいます)に破れてしまいます。商の人々は鳥をトーテムにしていました。鳥のトーテムは鳳凰になります。

商は龍の民族を吸収しました。しかし龍は消し去りませんでした。商では王が龍の子孫という考えをとりいれたのです。勝った側が負けた側のものを引き継ぐのは変に思うかもしれません。龍の民族には無視できない影響力があったということなのでしょう。

商では龍は王の権威を表すシンボルになりました。ここでも龍は民族統合の象徴になったのです。

龍は時代とともに祖先の霊・神から、王の権威を表すシンボルになりました。

のちの中国王朝では龍と鳳凰の両方が皇帝の権威を象徴する生き物になってます。それにはこのようないきさつがあったのです。

漢王朝以降の龍の姿

龍は古代には漠然と蛇のような姿だと考えられていたようです。先に述べた事情もあって、しだいに他の動物の特徴をもつようになりました。

絵画として描かれる場合、漢王朝以前には馬の首に蛇のような頭を持つ生き物と描かれることが多かったようです。しかしこの形と決まっていたわけではありません。

現在の龍の姿は漢王朝以降に出来上がった九似説という考え方がもとになっています。

九似説では龍は9つの動物に似ているとされました。

・頭はラクダ
・角は鹿
・目はうさぎ(幽霊の目という場合もあります)
・首は蛇
・腹は蜃(空想上の生き物、龍の一種で巨大な蛇の姿をしている)
・鱗は魚(鯉)
・爪は鷹
・手は虎
・耳は牛

他にも次のような特徴があります。
・口元から長いひげが生えている。
・銅板を叩いたような声で鳴く。
・頭の中央には博山(尺水)といわれる肉の盛り上がった部分がある。博山を持った龍は自由に空を飛ぶことができます。

オスとメスの違いがある

龍には雄と雌の違いがあります。

雄の特徴
角は根本より先が太い。
尖ったたてがみがある。
鱗はびっしりと重なっている

雌の特徴
鼻筋がまっすぐ(ようするに美人)。
柔らかいたてがみがある。
鱗の重なりがうすい。
雄が太い。

 

逆鱗に触れると

喉の下には大きな鱗を中心に逆さ向きに生えた49枚の鱗があります。

これは「逆鱗(げきりん)」といいます。逆鱗は龍の弱点で、ここに触れられると激しい痛みを感じるといいます。触った者を食い殺すといわれます。

ここから。触れられたくないことにして人を怒らすことを「逆鱗に触れる」といいます。

龍の能力

 

龍は水を操る霊獣

龍は水を自由に操ることができました。雷や雨を呼ぶことができます。地下から水を溢れさせ、海や湖を荒れさせることもできます。

龍の機嫌を壊してしまうと、旱魃になり、人々は水を得ることができません。日照りが続き旱魃が訪れると雨乞いが行われました。雨乞いは龍に対する祈りでもありました。

龍は古代人の雨や水の恵みに対する感謝や恐れを表現したものでした。善でも悪でもなく自然現象そのものなのです。

龍は水を操る以外にも様々な能力を持っています。

・口から気を吐くことができます。湿気を帯びると激しく燃えますが、乾燥すると消えてしまうという不思議な火です。

何でも叶える如意宝珠を持っている

神通力をもっていて次のようなことができます。

・龍は空や地下深くに一瞬で移動できます。
・体の大きさや形を変えることが出来ます。

龍の神通力は、首の下に隠してある如意宝珠が力の源です。

絵や像で龍が手に持っている玉が如意宝珠です。この如意宝珠はとても美しい玉です。持ち主の望みを何でも叶えてくれる不思議な力があるといわれます。

 

一般的な龍のイメージ(出典:楽天)

 

鱗を持つ生き物の王

古代中国では龍は366種類すべての魚や蛇など鱗を持つ生き物の王だと考えられました。366という数字は陰陽説がもとになっています。

龍は魚たちの暮らす水の中を統治しています。水の世界の王様なのです。

鯉が滝を登って竜になるという伝説を思い浮かべる人がいるかもしれません。「登竜門」の語源になった故事です。これは南朝の宋時代に書かれた歴史書「後漢書」に載ってるお話です。竜という伝説上の生き物がいて、後から作られた物語なので竜の由来とは関係ありません。

龍の生態

美しい宝石、ツバメの肉が大好きです。
哲、イグサ、ムカデ、センダンの葉、五色に染められた糸が嫌いです。

とくにムカデの毒は龍にとって致命傷になります。

龍は卵で生まれます。
雄と雌は蛇の姿になって交尾をします。

親は卵を温めることはしません。

生まれてほしいと願うだけで子供が産まれます。「思抱」という龍だけがもつ不思議な能力です。

産まれた龍は蛟になります。蛟(みずち)は角のない(あるいは角が小さい)、大蛇のような生き物です。

蛟の姿で500年くらしてようやく龍になるといわれます。

龍は秋は深い水の底でくらしています。春分になると天高く駆け上る習性があります。

1000年ごとの春分には古い体を捨てて、新しい体に生まれ変わります。蛇の脱皮のイメージに近いですね。でも皮だけでなく、内蔵や骨、すべての体の部分が新しくなります。

龍の古い肉体は石になります。しかし龍の体から産まれた石は薬になったり宝物になったり、魔除けになったり災害からまもってくれたり不思議な力があると信じられました。

仏教伝来で変化する龍のイメージ

如意宝珠は仏教の言葉。中国にインドから仏教が伝わると龍のイメージも変化しました。古代インドの蛇神ナーガは仏教に取り入れられて龍王になりました。ナーガは願いをかなえる玉を持っていました。その伝説が中国の龍にも受け継がれています。

インドのナーガは宝物を持っていました。その性格が中国の龍にも受け継がれました。仏教伝来と共に龍のイメージも変化したのです。

インドのナーガはもともと神でした。仏教に取り入れられて仏を守る下級神になりました。古代中国でも龍は神でした。道教では天帝の使いとなりました。

世界的に見れば時代があとになればなるほど動物神が人の姿をした神の下に置かれるようになります。中国の龍のイメージの変化にはインドの影響があるのかもしれません。

龍は神の使い

龍が天に登っていることから、古代中国では龍は天帝の使いと信じられていました。天帝とは道教で世界を支配する最高の神様です。

龍は神の使い、という考え方は古代中国が元になってるのですね。

古代中国の皇帝は龍をシンボルにしています。最も尊い霊獣・龍を配下にもつ天帝にあやかりたいという願いがあるからです。

天帝のように龍を飼いたいと探し回った皇帝もいたようです。ですが龍を飼ったという皇帝はほとんどいません。神話に出てくる舜の皇帝は龍を飼っていたそうですが。伝説上の存在です。そのくらい尊い生き物だったのです。

それだけに人々のあこがれの存在でした。

変化する龍

龍のイメージは時代と共にかわりました。

最初は祖先の霊・水を支配する神でした。それが王の権威を象徴する聖獣になります。

仏教の影響をうけた道教では龍は天帝の使いとなりました。

龍のイメージは時代と共に変わっています。しかし人々に恐れ・敬われる存在はかわりません。数ある聖獣の中でも最も気高く尊い生き物なのです。