夏越の祓の本当の意味

茅の輪くぐり

多くの神社では6月と12月には大祓(おおはらえ)という行事が行われます。

6月の大祓を夏越の祓(なごしのはらえ)といいます。夏越の祓は何のためにするのか知っていますか?

個人の罪穢れを払うため?

でもそれだけではありません。

社会の存亡に関わるもっと重大な理由があるのです。現在ではあまり意識せずに行っている人が多いと思います。でも本当の意味を理解して行うとさらに夏越の祓をやりたくなるかもしれませんよ。

目次

大祓の意味は災害を防ぎ平穏な世の中を願うため

古代より宮中や神社では様々な神事が行われてきました。

特に重要なのが、春の祈年祭、夏の大祓、秋の新嘗祭、冬の大祓です。春の祈年祭と秋の新嘗祭が農業・食べ物の生産に関係すること。夏の大祓、冬の大祓は穢れに関係するものです。

古代の日本の生活では食べ物の生産と罪穢れをはらうことが大きなテーマでした。その考えは神道の行事や考え方となって現代に受け継がれています。

大祓とは半年間の間に心身にたまった罪や穢れを消して、清らかな本来の姿を取り戻そうという行事です。

古代の日本人は人間は本来は良い存在だと考えました。穢(けがれ)がないのが本来の人間の姿です。でも生まれながらに清らかだった人間でも、生きている間に知らず知らずのうちに過ちをおかします。犯罪とまではいかなくても小さな嘘をついたり、生き物を殺したり、ささいな過ちは誰にでもあります。そうした過ちは穢れとなって体や心に溜まっていきます。罪を犯して例え役人に捕まらななかったとしても神様はしっかり見ています。

そして穢のたまった状態にしておくと神様が怒って悪い出来事が起こるのです。具体的には不作になって食べ物が収穫できなくなる。地震や台風などの災害が起こります

とくに昔の日本は稲作社会ですから不作や天候の被害は人間社会に致命的な被害を与えます。そこで私達の祖先は個人の小さな罪や過ちも積もり積もれば社会全体を脅かす災害になってしまうと考えたのです。そこで人々は罪穢れを祓って神様に許してもらことにしました。その方法が大祓なのです。

現代では農業だけでなく様々な産業が発達します。でも人々の願いの基本は同じです。「平和で穏やかな世の中になるように」という意味があるのです。

大祓が年に2回ある理由は古代日本の1年は今の半分だったから

大祓は年に2回行います。1年を前半と後半に分けているからです。

大祓は本当は1年の間に積もった罪穢れをはらうものです。それなら1年の終わりにすればいいのに。と思うかもしれません。事実、古代人は1年の終わりに大祓をしていました。

ところが古代人の1年は現代人の半分しかなかったのです。

古代の日本人は太陽の動きを測って1年を決める暦を持っていません。

昼と夜の長さが同じになる日が年の区切りと考えていました。つまり春分と秋分が一年のくぎりになっていたのです。その後、暦が伝わると古代人の考えていた1年は半年だったことがわかります。でも古代からの習慣は続けられました。だから半年ごとに行うことになったのです。

ちなみに盆と正月の行事ももともとは「年の区切りに神や魂が家にやってくる」という意味では同じもの。古代の1年が半年だったことの名残です。暦が伝わって1年に2回行うことになったので前半の区切りに祖先の霊、1年の区切りに年神様に来てもらうことになったのです。

夏越の祓(なごしのはらえ)と茅の輪くぐり

一年の前半、夏に行う大祓を「夏越の祓」といいます。「名越の祓」とも書きます。
12月の大祓は「年越の祓」「師走の祓」といいます。

6月になると神社では参道に茅(ちがや)を束ねて輪の形に作った「茅の輪」を置いてあります。

この茅の輪を3回くぐると汚れや災い、罪を祓い清められるのです。これを「茅の輪くぐり」といいます。

くぐり方には神社のしきたりがあります。その神社にあった方法でくぐってください。

一般的には数字の8を描くように3回くぐるのが良いとされます。

夏越の祓えは個人の幸せと世の中のため

現代では大祓の意味を「個人の幸せのため」といわれることも多いのです。でも大祓の本当の意味は個人の汚れや罪が溜まると災害になるので事前に防ぐためです。

決して個人だけの幸せのために行っているのではないのです。もちろん個人の幸せを願って行ってもかまいません。大勢の人が大祓をすればそれだけ世の中の災害が減るはずだからです。一人ひとりの願いは小さくても大勢でやれば社会全体を良くすることができる。そんな祖先の想いが込められたのが大祓なんです。それに世の中が安定で平和でなければ、個人の幸せはかないません。

個人の幸せを願っているようでいて実は少しばかり社会貢献しているのが大祓なんですね。6月の大祓は「夏越の祓」です。あなたも家族や友人を誘って夏越の祓に行ってみませんか?

 

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