アマビエとは?疫病流行を予言した海の妖怪

新型コロナウィルスによる肺炎が流行し、「アマビエ」という妖怪がSNS上で流行しているようです。

多くの人々がアマビエのイラストを描いてネット上にアップしているようです。

ちまたでは「疫病退散のご利益がある」として人気のようです。

アマビエとはどういう妖怪なのか、どのような歴史があるのかについて紹介します。

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アマビエとは

アマビエとは江戸時代に登場した妖怪。
江戸時代の後半。肥後国(熊本県)に現れました。

海から現れて、人魚のような形をしていたといいます。夜に光っていたともいうので発光現象もあったようです。

アマビエ本人が光るのか、光っている場所にいたのかは分かりません。

夜に海で光っているものがあると住民から通報があったのでしょう。役人が行ってみると「アマビエ」と名乗る妖怪が出現しました。

そのアマビエは予言めいたことを言い残して海中に姿を消しました。役人はその様子を絵を描いて報告した。

と瓦版に書かれています。

アマビエの外観文章では説明はありません。絵が伝わっているのみです。その絵をみると

外観は髪が長くて、くちばしがあります。かっぱのような顔です。
体は鱗に覆われ、3本の足かヒレのようなものあります。

かわら版の内容

肥後国海中え毎夜光物出る所之役人行
見るにづの如く者現す私は海中に住アマビヱと申
者也當年より六ケ年之間諸国豊作也併
病流行早々私し写し人々に見せ候得と
申て海中へ入けり右は写し役人より江戸え
申来る写也

弘化三年四月中旬

現代語訳

弘化3年4月中旬(1846年5月上旬)。
肥後国(熊本県)の海に毎晩光るものが現れたので、役人が行った。
するとそれが姿を現した。
見たところは図のようであった。
その者は役人に対して
「今年より6年間は諸国で豊作が続くだろう、疫病も流行するだろう。早く私の姿を描いた絵を人々に見せよ」
と言って海中に帰っていった。

役人は絵を描いて江戸に報告した。

以上です。

弘化三年は西暦にすると1846年。

弘化は天保の次、嘉永、安政の前の元号です。ほぼ幕末の時代ですね。

アマビエの仲間アマビコ

アマビエと似た妖怪にアマビコ(海彦、天日子)というものがいます。

いまのところ年代がわかるアマビコの報告例で最も古いのは「越前國主記」という地元の歴史を描いた本に載っている。天保十五年(1445年)の記録です。

越前の海彦

原文

越後国浦辺ニ而海中 出候而、嘗辰年日本
之人七歩通り可死、我が形の給園を見たる
人死をのかる丶となん申しき
天保十五年辰春

現代語訳

越後国(福井県)の浦辺で海中から出てきた海彦が「当辰年(天保15年)に日本人の七割が死ぬ、しかし私の姿を描いた絵図を見た者は死をのがれることができる」と言った。

天保十五年(1445年)甲辰(きのえたつ)の春

海彦

姿は尖った口、三本の足があります。毛のようにみえるそうです。

その後、何度かアマビコの瓦版が出て、明治時代になっても新聞にアマビコが登場します。

やはり豊作や疫病が来ると予言します。後の時代のものは猿のような顔をしたものもあり、全身が毛に覆われています。

アマビエの目撃談は1件しかありませんが、アマビコは何件もあります。

江戸~明治時代には何度かアマビコ・アマビエが流行したようです。不安な時期になるとこういうものが流行るんでしょうね。

たぶん、アマビエはアマビコの外観は違う点も多いですが、内容を似ています。

アマビコは「私の姿を描いた絵を見る者は死をまぬがれる」と言ったので、こちらはご利益がありそうです。

現代にアマビエが流行したわけ

令和2年(2020年)2月27日。妖怪掛け軸を売っているお店がアマビエの絵と解説をツィッターに載せたのが始まりとか。

その後、様々な人にリツィートされ漫画家がイラストを描いたり、テレビやマスコミも取り上げて広まったようです。

3月6日。江戸時代のアマビエの瓦版を保管している京都大学図書館が瓦版の画像を公開しました。

妖怪漫画の第一人者。故水木しげる氏も生前にアマビエを描いて漫画に登場させていました。「ゲゲゲの鬼太郎」に登場するアマビエは予知能力のある妖怪。でもあまり役に立たない。というアイドル的存在でした。

令和2年3月17日には水木プロダクションもツィッターに水木氏の原画を載せています。

さらには厚生労働省までこの騒ぎに注目。

新型コロナウィルス対策を行っている厚生労働省はこの現象に注目。

新型コロナ対策啓発用のアイコンに採用しました。

厚生労働省 COVID-19

このアイコンは厚生労働省のホームページに載っています。
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について

このアイコンそのものより、ウイルス対策のホームページに載っている注意事項をよく呼んで守って欲しいと思います。

アマビエは注意を呼びかけに来た?

しかしもとになったかわら版をよく読んでみると。

アマビエは「豊作と疫病が来る」と予言し「人々に私の姿を写して見せよ」とだけ言っています。

アマビエは病気を治す力があるとは言っていないのです。

疫病退散なら疫神(スサノオ・牛頭天王)や御霊を信じて願ったほうがご利益はありそうです。

アマビエは疫病が流行るので人々に注意するよう知らせるために現れたともいえます。

まあ、似たような妖怪のアマビコは「私の姿を見る者は死をまぬがれる」と言いましたから、アマビエにも同じ能力があってもおかしくは不思議ではありません。

災害や疫病の流行を予言して、自分の姿を描いたものを見れば救われる。というのは江戸時代の予言妖怪の一つのパターンです。

アマビエは瓦版業者の戦略?

江戸時代には、ある怪事件の報告があるとしばらくして似たような瓦版、あるいは他の地域で似たような瓦版が発行されます。これも江戸時代の瓦版のパターンです。

瓦版業者が発行部数を伸ばすため。ある地域で面白い事件があるとそれを模倣したものが各地に広がります。「この絵を持っていれば助かる」というのは明らかに絵を買わせるための商売上の理由です。

アマビエもそのひとつかもしれません。

でも、不安なときにはそのようなものが人々にはウケます。人々は得体のしれない不安があるとその理由を求めます。理由をしることが不安を解消するほうほうのひとつだからです。不安の理由が正しいかどうかは関係ありせん。脳が納得できればいいのです。

不安なときほどデマが広がりやすいのはそのためです。

江戸時代も現代も人間の心理は変わらない。ということなのでしょうね。

アマビエは心の清涼剤

とはいえ、たわいのないものであっても。絵を描いて拡散することで人々の不安が和らぐのならいいと思います。心の清涼剤のようなものかもしれません。

人を攻撃するデマが広がるよりはよっぽどいいと思います。

それに今の御時世にはピッタリかもしれません。「病気が流行るので注意してください」と呼びかけているのかもしれないですから。

それにしても科学万能の現代に普段は信仰心のない人々にもこのようなものが流行るとは。

江戸時代も現代は同じ。

やはりいつの時代にも人々の心には「未知のものを信じる」という想いがあるのですね。

でもまあこういうのは「話題性とノリ」なんでしょうね。

病気が流行って大変な時期ですから、こういうのを見たり描いたりして気晴らしになるのならいいんじゃないでしょうか。

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