12月25日クリスマスがキリストの誕生を祝う日になったわけ

12月25日はクリスマス。イエス・キリストの誕生日といわれます。

ところが聖書やどの文献を見てもイエスの誕生日は書いていません。イエス・キリストの誕生日はわからないのです。

でも12月25日はキリスト教の西方教会(現在のカトリックとプロテスタント)では「イエス・キリストが降臨したのを祝う日」とされ、大切な意味を持っています。なぜイエスと関係ない12月25日がキリスト教(カトリックとプロテスタント)の大切な日になったのでしょうか?そこにはキリスト教以前から信仰されていた太陽神が大きく影響しています。

他にもXmasをなぜクリスマスと呼ぶのか。そもそもキリストとはなんなのか?クリスマスには日本人の知らない不思議がいっぱいです。そんなクリスマスの疑問を集めてみました。

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12月25日は太陽神の祝日

キリスト教が古代ローマで認められるよりも前の時代。ローマ帝国で流行っていたのはミトラ教という宗教でした。

ミトラ教とは

ミトラ教は太陽神ミトラを崇拝する宗教です。

もともとミトラはインド・イランを中心に活動したアーリア人が信仰する神でした。のちにゾロアスター教に取りれられ主神アフラ・マズターのもとで働く天使(あるいは低級の神)のひとつになりました。

やがて太陽神・英雄神ミトラの人気が高まり、アフラ・マズダーとともに神として信仰を集めます。ミトラを主神として崇めるミトラ教も誕生しました。ミトラ教はトルコやギリシアに広まり、ローマにも伝わります。

古代ローマにはユピテル、バール、アポロなど様々な神やドミティアヌス、ディオクレティアヌスなど皇帝を神として崇める信仰がありました。様々な宗教が信仰されていたのです。

ローマに伝わったミトラ教は庶民の信仰する宗教として人気を集めました。3世紀頃にはローマでミトラ教が盛んになります。皇帝コンモドゥスは個人的に崇拝して歴代の皇帝もミトラ教の信者になりました。

もうひとつの太陽神信仰

ローマにはミトラ以外にも太陽神信仰がありました。

ローマ神話にも登場する太陽神ソルを崇拝する宗教です。ソルは不滅の太陽、不敗の太陽と呼ばれ人気を集めていました。

ソルの信仰ではローマの当時の暦で12月25日は冬至でした。12月25日はタリス・インウィクティと呼ばれ大切な日でした。冬至は太陽の出ている時間が一年で一番短い日です。弱まった太陽の力が再び強くなる日。ということで太陽の復活の日と考えられていました。

ローマの正式な祝日

紀元273年。皇帝アウレリアヌスは12月25日タリス・インウィクティをローマの祝日にしました。太陽神ソルの誕生日はローマの正式な祝日になりました。

アウレリアヌスはソル信者でしたが、ミトラ教の信者は12月25日をミトラの誕生日と考えました。他の皇帝たちにもミトラの信者になるものが現れ、タリス・インウィクティはやがて太陽神ミトラが復活する日、ミトラが再び誕生する日と考えられるようになりました。

キリスト教の普及で冬至のお祭りがクリスマスに

ミトラ教はソルやヘリオスといった各地の太陽神と一緒になりローマで信仰されました。

しかしそれ以上に信者を増やした宗教がありました。キリスト教です。キリスト教はミトラ教以上に熱心に布教したため信者が増えました。

4世紀のローマ皇帝コンスタンティヌス1世はミトラ教信者でしたが、キリスト教を保護しました。死の間際には自らもキリスト教に改宗しました。

皇帝の保護を得たキリスト教徒はミトラ教の神殿を破壊しました。ミトラ教はキリスト教徒から迫害を受けます。

紀元354年。ローマ皇帝リベリウスはローマの祝日12月25日タリス・インウィクティをキリストの誕生日と定めました。

ミトラ教はローマ帝国の正式な宗教になったキリスト教の勢いには勝てず衰退します。そして5世紀にはミトラ教は滅亡しました。

こうして12月25日はキリストの誕生日=キリスト教の聖なる日になったのです。

現在の暦では冬至は12月22日ごろですが、当時の暦では25日にあたります。

またキリスト教がヨーロッパ各地に伝わるとヨーロッパ各地で冬至の祭りとして行わていた行事もキリスト教に関係したお祭りに変えられていきました。

こうしてもともとは太陽神の祝日・当時のお祭りだった行事はキリスト教の聖なる日になったのです。

もう一つのクリスマス

キリスト教にはもうひとつクリスマスがあります。

正教会というカトリックやプロテスタンドでもない別の宗派ではクリスマスといえば1月6日です。

もともと1月6日はエジプトのオシリス神の祝日でした。オシリスは太陽神ラーのあとを継ぎ、神々の王になりました。しかし他の神に殺された後、妻のイシスの活躍で復活します。オシリスが復活した日が1月6日だとされたのです。オシリスはギリシアに伝わり酒の神ティオニソスと同じ神だと考えられました。ローマ時代にもオシリスを信仰する人々がいました。

オシリス信仰に対抗するため、エジプトやギリシアで布教活動をしていたキリスト教徒は1月6日はイエスが洗礼を受けた日として広めました。この考えはのちに正教会に伝わり、イエスの誕生日とされたのです。

現在でも一部の正教会ではクリスマスは12月25日ではなく、1月6日としているところもあります。

サトゥルナリア祭り

1月6日のオシリス・ディオニソス祭り、12月25日の不滅の太陽の祭り以外にクリスマスに影響を与えた祭りがあります。

それがローマ帝国で行われていたサトゥルナリア祭りです。主に地中海沿岸の温暖な地方で行われていました。

ローマ帝国では12月17日から24日まで農耕の神サトゥルヌスのお祭りが行われていました。この期間は仕事はすべて休みになりパーティーをしたり、親しい人々の間でプレゼントを送り合っていました。

みんなでパーティーをしてプレゼントを送りあうという習慣が後のクリスマスの習慣に大きく影響したようです。

クリスマスの起源といえば聖ニコラウスの逸話が有名ですが。どちらかといえばローマ教会のこじつけで、もとからあったお祭りの影響が多いのです。

クリスマスはなぜXmasなの?

クリスマスは英語で「Christmas」と書きます。正式には「Mass of Christ」。意味は「キリストの祭り」です。

またクリスマスを「Xmas」と書くこともあります。これはギリシア語でクリストス(救世主)の綴りを書いたときに先頭の文字が「χ(カイ)」だったから。英語には「χ(カイ)」がないので形の似ている「X(エックス)」を使ってキリストを表現しました。

つまり、Xはキリスト、masは祭りを意味します。

ところが熱心なキリスト教信者の中には、Xはイエスが磔になった十字架を連想させる不吉なマークだと考える人もいます。日本人は十字架はキリスト教を象徴するマークだと考えていますが、十字の捉え方は宗派や人によっても違うようです。とくに海外の人に対してむやみに「Xmas」と書くのはやめた方がいいかもしれません。

フランス語ではクリスマスは「Noel(ノエル)」と書きます。ギリシア語の「新しい太陽」を意味する言葉から造られた単語です。古代の太陽神の伝統が残っていますね。

キリストとは何?

キリストとはいったい何でしょうか?

「イエスのこと?」

半分辺りで半分外れです。

確かにキリストはイエスのことを意味することもありますが、イエス=キリストではありません。

「キリストとは救世主」という意味です。

救世主は英語では「Messiah(メサイアー)」あるいはメシアといいます。

メシアはヘブライ語では「油を注がれた者」という意味がありました。古代の中東では祭司は選ばれたときに額に油をぬるという儀式がありました。そのような伝統から、選ばれた人=理想的な王=人々を救う人と考えられるようになりました。

ヘブライ語のメシアーがギリシャ語に訳されて「クリストス(Χριστός)」になりました。それを英語に訳したのが「Christ」なのです。

キリスト教では「イエス・キリスト」と呼びます。これは「イエスは救世主」と言ってるのです。「キリスト」は個人の名詞ではないのですね。

ユダヤ教やイスラム教でもイエスという宗教家がいたことは認めますが、イエス・キリストとは言いません。

イエスを救世主と考えるのはキリスト教だけだからです。

クリスマスはキリストが誕生したことを祝う日

12月25日がイエスの誕生日ではないとすると、キリスト教徒はなぜクリスマスを祝っているのでしょうか?

イエス・キリストがこの世に誕生したことそのものを祝う日だからです。

大昔のことなので何月何日に産まれたのかはわかりません。でもイエスがこの世にいたのは間違いありません。だから産まれたことをどこかでお祝いしたいと考えるのは人として当たり前の気持ちです。そこでおめでたい日を選んでイエスの誕生を祝うことにしたのです。

つまり。誕生日だからお祝いするのではなく、イエスがこの世に現れたことに感謝する日。という意味があります。

日本でも似たような例があります。建国記念日がそうです。日本の建国記念日は2月11日です。でも日本という国ができたのは古代です。いつ始まったのかわかりません。そこで神話から2月11日を選んで日本ができたことをお祝いする日にしたのです。それとよく似ています。

だから「太陽神の祭日はキリスト教とは関係ないからお祝いしない」と難しく考える必要はなく、素直にイエスが産まれたことを祝福すればいいんですね。

もちろんキリスト教徒でない場合はお祝いする必要はありません。だから便乗して騒ぐと熱心に信仰している人たちが不愉快に思うかもしれません。ほどほどにしましょうね。

このようにクリスマスには日本人が知らない秘密がたくさん隠されています。もともと宗教の行事だから当たり前なのですね。大半の日本人にとってはたたのイベントですが、信者とっては聖なる日です。ちゃんとした意味があることを覚えておきたいものです。

 

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