正月になると年神様が家にくるといいます。
年神様は大年神といい、恵方の神・歳徳神と同じともいわれます。
正月にかざる鏡餅は年神様へのお供え物。
古来より日本で信仰された神様ですが、長い年月の間に様々な神様と同じと考えられるようになりました。
年神様とはどのような神様でしょうか?
年神様について紹介します。
年神様とは
大年神
年神様といわれている神様は 大年神(おおとし の かみ)といいます。日本で古くから信仰されている神様です。
稲は春に種をまいて初冬に収穫します。育てるのにほぼ1年かかります。稲の別名を「とし」ともいいました。大年神は穀物神、兄弟(妹)の宇迦之御魂神とよく似た性格の神様です。魂年の初めにやってきて作物の成長を助け、家を見守ってくれると信じられています。
父親は建速須佐之男命(たけはや すさのお の みこと)。母親は大市比売(おおいち ひめ)。兄弟姉妹に宇迦之御魂神(うかのみたま の かみ)がいます。
古事記の内容をもとに系図にするとこうなります。
大年神には大山咋神や阿須波神などたくさんの子供がいます。御年神(みとしかみ)もその中のひとりです。
少彦名神が去った後の大国主神に協力して葦原中国(あしはらのなかつくに=日本)を発展させました。大年神は国津神の中でも中心的な神様です。
息子の御年神が年神様といわれることもあります。御稔神とも書きます。穀物神の性格をもち、大年神と似た性格の神様です。
年神様は私たちの祖先だった
稲作が広まった古代日本では年のはじめに祖先の魂(祖霊)が戻ってくると信じられていました。祖霊は家族を見守り田畑の作物の成長を助けてくれるのです。
暦のない古代日本では春分・秋分を年の区切りにしていました。半年ごとに節目の行事を行っていたのです。そして古代人は春の初めと秋の初めには祖先を迎えるお祭りをしました。
「祖先の魂が帰ってくる」という考えは大年神やあとで紹介する歳徳神よりも古いです。漠然と「祖先の魂」と考えられていたものが後の時代になって名前がついて「神様」として信仰されるようになったのです。
現在も地域によっては正月にお墓参りをしたり、祖先をお迎えするところもあります。形はかわっても考え方は古代から続いているのです。
古代の正月とお盆は同じ行事だった?
暦が伝わると1年は12ヶ月になり、春に年神様をお迎えするのが「正月」。秋に祖先をお迎えする行事が「お盆」になりました。
そして正月にお迎えする神様が「年神様」と呼ばれるようになりました。
お盆にはナスとキュウリで牛や馬の形を作りますよね。夏に収穫できる作物がナスとキュウリだから。最初はそのときに収穫できた作物をお供えしていたはずです。お盆の行事にも古代の収穫祭の名残があるのですね。
祖先の魂は田の神や家の神とも考えられました。
収穫した作物を使って祖先=神へのお供え物や依代をつくる。正月の鏡餅とお盆のナス・キュウリの動物はもともとの意味は同じだったわけです。
歳徳神
平安時代のおわりごろから鎌倉・室町時代にかけて。公家中心に広まっていた陰陽道が武家や庶民の間にも広まりました。
陰陽師たちは方位神の歳徳神を年神としました。
都市で暮らす人々には豊作の神様といわれてもなじみがありません。都市部では歳徳神は「福を運んでくる神様」と受け止められるようになりました。
歳徳神が来る方角は恵方・吉方と呼いいます。
現在でも行われる「恵方巻」に欠かせない神様です。
暦にはよく女神の姿で描かれています。
でも性別は特に決まっていません。大年神は男神です。
地方によっては歳徳神も男神と考えるところもあります。
童子姿の歳徳神に出会ったという話もあります。
頗梨采女
室町時代から江戸時代にかけて占いのバイブルだった簠簋内伝金烏玉兎集(ほきないでんきんうぎょくとしゅう)では歳徳神と頗梨采女(はりさいじょ)は同じ神とされました。
頗梨采女は八大竜王のひとつ娑伽羅竜王(しゃがらりゅうおう)の娘。
蘇民将来物語の中で武塔天神が会いに行った娘が頗梨采女のこと。蘇民将来と出会ったのは頗梨采女に会いに行く途中の出来事なのです。
平安時代より祇園社(現在の八坂神社)で祇園天神とともに祀られました。祇園天神とは天竺(インド)で釈迦が説法を行った寺院・祇園精舎の守護神のことです。祇園天神=武塔天神=牛頭天王と考えられました。そこで頗梨采女は牛頭天王の妃として広まりました。頗梨采女と牛頭天王の間には八人の王子がいます。
牛頭天王は須佐之男命と同じ神。そのため頗梨采女は奇稲田姫(くしなだひめ)と同じ神様とされます。
法師陰陽師や唱門師とよばれる民間陰陽師が祇園信仰を広め各地で祀られました。仏教と陰陽道と神道がまざった信仰が祇園信仰でした。
頗梨采女は祇園信仰で広まった神様です。「頗梨采女は歳徳神ではない」という意見もあります。とはいえ歳徳神=女神のイメージに大きな影響を与えたと思える神様です。
その他の呼び方
大年神、大歳神、お歳徳(おとんど)さん、年殿、恵方神、正月様、年爺さんん、年若さん、など地方によって呼び方はさまざまです。
ナマハゲも年神様のバリエーションといわれ。各地で様々な姿や名前で信仰されていたようです。
年神様の正体は?
というわけで。今までの話をまとめると。
年神様は須佐之男命の息子(男神)。
恵方にいる神様(女神説の他に老人・童子説もあり)。
牛頭天王の妃(女神)。牛頭天王は須佐之男命なので須佐之男命の妃。
民間信仰では他の神でもあり家の神でもある。
しかも。
祖先の魂。
というややこしい神様ですね。
かつては個人の家でお迎えしていた「祖先の魂」が社会全体の「神」と考えられるようになった。それに加えて仏教や陰陽道などさまざまな文化の影響で行事の内容も変わっていった。というわけです。
日本の神様は分離合体(分霊と習合)ができて名前も変わるのでこのようなことがおこるのですね。
もしかするとどの祖先が来てくれるかで見え方が違うのかもしれません。
でも正月にやってきて幸福を授けてくださる神様なのは共通。
正月は家にいて年神様をお迎えしてはいかがでしょうか。
もちろんその時は鏡餅を用意して起きましょう。
我が家では今年はこんな鏡餅を置くことにしました。
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鏡餅は年神様へのお供え物兼依代ですから。
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