ミスマルノタマ。日本神話の不思議なアイテムとは?

八尺瓊勾玉

ミスマルノタマをご存知でしょうか?

日本神話に登場する不思議なアイテムです。

近頃ではスピリチュアルな世界でも注目が集まっていますね。もちろん様々な解釈があると思いますけれど。本来の意味。神話で描かれる「みすまるのたま」とはいったいどういうものでしょうか?

その「みすまるのたま」にはどんな意味があるのでしょうか?

古事記に描かれる「みすまるのたま」とそこに込められたスピリチュアルな意味を紹介します。

目次

「みすまるのたま」の意味

まずもともとの「みすまる」の言葉の意味を紹介します。

「み」は、丁寧さや尊敬の意味の込めた接頭語。漢字で書くと「御」

「すまる」は「すばる」と同じ意味。「集まる、まとまる」の意味。漢字で書くと「統まる」。

「すまる」の動詞形が「すめる(まとめる)」。

すめる(まとめる)みこと(尊い人)は「すめらみこと」。

天皇の古い言い方を「すめらみこと」と言います。これは「まとめる人、治める人」という意味です。

さらに「すまる」が変化して「昴(すばる)」になります。

夜空に輝く昴(すばる=プレアデス星団)のことですね。

スバル

日本語で「すばる」と言うのは星が集まっているから「すばる」というのですね。

「まとめる」「集める」という言葉に丁寧さ・尊敬・尊い意味を表現する「み」をつけると「みすまる」。漢字で書くと「御統まる」

「たま」は漢字で書くと玉、珠、魂、霊など。

「みすまるのたま」とは、集まっているたまのことです。それもただの「たま」ではありません。とても尊いもの、素晴らしい「たま」です。

古事記に登場するみすまるの玉

古事記では装身具の名前として「みすまるのたま」が出てきます。

装身具としての「みすまるのたま」は勾玉やビーズ状の物をひもにたくさん通してひとまとめにしたもの。数珠やパワストーンブレスレットみたいなものです。

古事記では何箇所も登場するので紹介しましょう。

天照大御神の装備品

古事記・上つ巻。神話の部分。

須佐之男命(すさのをのみこと)は父の伊邪那岐命(いざなきのみこのと)から海を統治するように言われましたが。父の命令に従わず、母のいる根の堅州国に行くことにしました。

その前に須佐之男命は姉の天照大御神(あまてらすおほみかみ)に報告するため高天原にやってきました。須佐之男命が天に上がるとき。山川はことごとくどよめき、国の土はみな震えました。

そこで天照大御神は「弟がやってくるのは良くないことを考えているのかも。私の国を奪おうとしているのかもしれない」と言うと。男装して武具や弓矢を装備して弟を出迎えます。

このときの天照大御神の装備品に「ますまるのたま」が登場します。

天照大御神は女性の髪型を解いて、角髪(みづら)という男性の髪型に結び直し。そして髪の左右と両手に、八尺勾璁の五百津のみすまるの珠(やさかのまがたまのいほつのみすまるのたま)を身につけました。

八尺勾璁(やさかのまがたま):八尺(やさか)は「大きな・長い」の意味。大きな勾玉。
五百津(いほつ):「つ」はひとつ、ふたつの「つ」。つまり「いほつ」は「500個」の意味。でもここでは文字通りの「500個」ではなく「たくさん」の意味。
みすまるの珠:珠がまとまったもの

直訳すると「大きな勾玉をたくさんひもに通してまとめたもの」になります。

天照大御神は頭の左右と両腕の合計4か所に「みすまるの珠」を身に着けました。

国を守るため武装した天照大御神が弓矢や武具を身につけるのは分かります。「みすまるの珠」は見た目には勾玉がたくさん集まったものなので戦いには関係なさそうに思えます。でも「みすまるの珠」はただのアクセサリーではありません。

呪力・魔力を持った装備品なのです。

RPG風にいえばマジックアイテムです。

もともと天照大御神は武器を手にして戦う神様ではありません。光や生命力などのエネルギーを司る神様です。そのような天照大御神が持つ「みすまるのたま」ですからただの勾玉ではありません。超自然的な力が蓄えられているのです。

天照大御神はいざとなれば魔力を使って戦うつもりだったのでしょう。でも戦う場面は訪れませんでした。

「みすまるのたま」から神様が生まれる

というのも誓約(うけひ)という儀式をして須佐之男命の意思を確認することにしたからです。

誓約(うけひ)はとは占いです。ここではお互いの持ち物を口に含んで噛み砕いて吐き出します。このとき勾玉や剣を噛み砕くのですからさすが神様です。人間なら歯が欠けてしまいます。

このとき須佐之男命は天照大御神が頭や手に付けている「八尺勾玉のみすまるのたま」をもらって誓約をしました。

そして5柱の神様が誕生しました。

左の角髪の勾玉:正勝吾勝勝速日天之忍穗耳命(まさかつあかつかつはやひあめのおしほみみのみこと)

長い名前なので一般には 天之忍穗耳命(あめのおしほみみのみこと)と呼ばれます。天之忍穗耳命の子が天孫降臨した瓊々杵命(ににぎのみこと)。

ニニギノミコト

その子孫が神武天皇、そして皇室の祖先に繋がります。

右の角髪の勾玉:
天之菩卑能命(あめのほひのみこと)

御鬘(かずら=髪飾り)の勾玉:
天津日子根命(あまつひこねのみこと)

左の手の勾玉:
活津日子根命(いくつひこねのみこと)

右の手の勾玉:
熊野久須毘命(くまのくすびのみこと)

他の4柱の神々は古代豪族の祖先になっています。

ここで注目したいのは「八尺勾玉のみすまるのたま」から神様が誕生したことです。

「みすまるのたま」に込めらた太陽神の力に須佐之男命の力が加わると新しい神様になりました。この「みすまるのたま」から生まれた神々は天照大御神が自分の子だと言ってます。つまり太陽神の力を受け継いだ神様たちなのです。

やはり「みすまるのたま」はただのアクセサリーではなく。神様の元になるような超自然的な力が込められているものなのです。

三種の神器「八尺瓊勾玉」

八尺瓊勾玉

天照大御神が身につけた「八尺勾璁の五百津のみすまるのたま」とは別のみすまるのたまもあります。

それは三種の神器のひとつ。「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」です。

誓約(うけひ)の後。姉に邪心がないことを認めてもらった須佐之男命は調子に乗って高天原でいたずらをし放題。ついに犠牲者が出てしまい。天照大御神はショックをうけて天の石屋(いわや)の戸を開けて引きこもってしまいます。

そこで神々が集まって対策を話し合い様々な道具を揃えて儀式を行いって天照大御神を呼び出すことに決定。

このとき玉祖命(たまのおやのみこと)は「八尺勾玉の五百津のみすまるの珠」を作りました。

名前は天照大御神が身につけていたものと同じですが新しく作られたものです。

そして儀式(お祭り騒ぎ)が行われ天照大御神が出てくるのですが詳細は省きます。

ここで作られた「八尺勾玉の五百津のみすまるの珠」は後で天孫降臨のときに天照大御神から瓊々杵命に手渡されました。

このとき瓊々杵命がうけとった「鏡、剣、勾玉」が三種の神器です。

一般には「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」と呼ばれています。もともとは「八尺勾玉の五百津のみすまるのたま」と呼ばれていたことから。たくさんの勾玉が集まってみすまるのたまになっていることがわかります。

三種の神器は天皇の皇位継承の印として長年大切にされてきました。

八尺瓊勾玉は天照大御神が天の岩戸から呼び出すときに使われたもの。その大切なものを皇位継承の証として受け継いでいるのですね。もちろん現在に伝わるものは神話に登場する物ではなく人間が作ったものです。でも大切なのは天照大御神と繋がりです。

さらに古代には勾玉を束ねたもの神事に必要なものでした。天岩戸の神話は物語ですけど。実際の神事をイメージして描かれています。古代には神様を呼ぶとき、神様の力をお借りするときには「たくさん集まった勾玉=みすまるのたま」は必要なものだったのです。神事に必要なものを継承の証として受け継いでいるのは。神様の力を譲り受けることが大切だと考えられていたからです。

以上。神話に登場する「みすまるのたま」とその意味を紹介しました。

神様の霊力をもったもの。神様の力とのつながりが深いものだとわかります。それも一つではありません。不思議な力を持つものが「たくさん集まっている」というのも重要なポイントです。

神話のみすまるのたまを知ることはスピリチュアルな物の理解にも役立つと思います。

よかったらシェアしてね!

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次