恵方(えほう)とはとても縁起のよい方角です。
年神様(歳徳神)のいる方角を恵方といいます。
節分に行われる恵方巻(えほうまき)では「恵方」を向いて食べますね。
恵方からやってくる神様はどのような神様なのでしょうか?
令和5年(2023年)の恵方と恵方からやってくる神様について紹介します。
恵方は1月1日ではなく、立春(2月4日)から変わります。
節分(2月3日)までは前年度の恵方を使ってください。
恵方にまつわる習慣、恵方巻と恵方参りについても紹介します。
恵方とは
恵方(えほう)とは年神様がやって来る方角。
恵方は 明きの方(あきのかた)、吉方(きほう・きっぽう)ともいいます。
陰陽道(おんみょうどう)では年徳神のいる方角です。
陰陽道は日本で生まれた呪術宗教ですが、もとになったのが陰陽五行思想(いんようごぎょうしそう)や道教なので中国的な雰囲気があります。それに古神道や密教・修験道の要素がミックスされて誕生したのが陰陽道です。
民衆の間に陰陽道が広まると年神と歳徳神は同じと考えられました。
恵方は日本独特の習慣。方位学や陰陽思想が発達した中国でも「恵方信仰」は存在しません。
恵方からやってくる年神様とは
年神様は福を授けにやってくる神様
日本では古来より正月には年神様がやってくると考えられていました。古事記では 大年神(おおとしのかみ)と書かれています。大歳神とも書きます。
大年神は須佐之男命(すさのおのみこと)と神大市比売(かむおおいちひめ)の子供。宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)とは兄弟です。
年神様は福の神的な性格があります。作物を実らせ豊作をもたらしてくれると考えられていました。古代の言葉で「とし」には「穀物」の意味があります。兄弟の宇迦之御魂神と似た性格ですね。
つまり 年神様は作物を実らせてくれるありがたい神様です。昔の日本人にとってお米は現代人のお金と同じ価値があります。
つまり豊かな生活をもたらしてくれる神様が年神様です。その年神様をお迎えするための依代が門松。鏡餅は年神様へのお供え物です。
年神様のやって来る方角ができた
でも古代の日本人は吉方位は知りません。年神様は正月になるとどこか遠いところからやって来ると思っていました。
日本に大陸から方位学が伝わり、日本人は方角にもいい方角とよくない方角があるのを知りました。年神様の来る方角が恵方・吉方とされました。
大年神が陰陽道と合体
さらに陰陽師は陰陽道の神様・歳徳神は大年神と同じと考えました。陰陽道では恵方にいるのは歳徳神だったからです。
よく暦とかに描かれている女神が歳徳神です。
簠簋内伝(ほきないでん)では歳徳神は頗梨采女(はりさいじょ)と同じと書かれています。
簠簋内伝は「安倍晴明が書いたとされる」陰陽道の秘伝書です。民間陰陽師の間でバイブル的存在でした。といっても書かれたのは鎌倉時代。本物の安倍晴明が書いたのではありません。でも書いたのは相当な知識の持ち主だったのは間違いありません。
頗梨采女は龍王の娘で、牛頭天王の妃です。牛頭天王は須佐之男命と同じですから、頗梨采女は櫛名田比売(くしなだひめ)と同じです。
櫛名田姫は八岐の大蛇の生贄になってるところが有名ですね。でも本来は「稲を実らせる神」です。奇(くし=素晴らしい)稲田(いなだ=稲が実る田)の姫。がもともとの意味。大年神と似た性格ですね。
そうなると大年神と奇稲田姫が同じになってしまいますね。しかも大年神は男神です。でも、もともと歳徳神には決まった姿はなかったようですし、いろいろな神様がやって来るということなんでしょう。好きな神様に来てもらえればいいのではないでしょうか。
名前や姿はいろいろありますが 年神様はあなたに幸運と財運を授けにやってくる 福の神なのです。
なぜ神様がわざわざやって来るの
なぜ年のはじめに神様がやってくるか不思議に思うかもしれません。それは日本人の古い信仰が関係しています。古代日本。暦がなく1年が今の半分だった時代。年のはじめには祖先が帰ってくる。と信じられていました。子孫のために祖先の魂がやってきて助けてくれるのです。
暦が伝わり1年が12ヶ月になると、1年に2回祖先が帰ってくることになりました。そこで1年の最初は神様が来るとき、後半の最初は祖先が帰ってくるとき。となりました。それぞれの家庭にやって来る年神様は祖先の魂が姿を変えたものなのです。だから地域や年代によって姿かたちや名前までバラバラなのです。
やがて正月には年神様が来ると考えられるようになりました。ちなみに後半の最初に祖先がやって来る日は仏教と合体して「お盆」になりました。
では年神様のやって来る方角はどこでしょうか?
2023年(令和5年)の恵方は 南南東やや南
2023年(令和5年)の恵方は正式には24方位で決まります。
東西南北と北東・北西・南東・南西をさらに細かく3つずつに分けているからです。
24方位では南南東やや南
「それでは細かいよ」というときは16方位の南南東で代用します。
恵方の行事
恵方の行事と聞いておなじみなのは恵方巻きと恵方参りですね。
ところが正月、節分(2月3日)はまだ立春の前です。
なので正月に恵方りする場合や恵方巻きには前の年度の恵方を使います。
正月に恵方参りや2月3日に恵方巻きをする場合は北北西やや北を使ってください。
16方位では北北西です。
でも広告のチラシには春分に関係なく南南東を書いていると思います。
2月4日より前に南南東やや南を使っても問題はありません。
2月4日より前の南南東やや南は「月徳神」のいる方角。
恵方(歳徳)が大吉なら、月徳は中吉。方位にはちがいありませんから。
恵方参り
明治時代までは年が明けて節分のころには恵方参りが盛んでした。年神様のいる縁起のいい方角にある神社にお参りするのです。
やがて方角を選んで行くのは面倒、人気の神社に行きたい。ということで現在の初詣に変わってしまいました。でも恵方は現在でもあります。縁起のいい方角に出かけていって、自分から神様をお迎えするのもいいかもしれませんね。
恵方巻
恵方が関係した行事といえば現代では「恵方巻」が有名です。恵方を向いて巻きずしを食べるという習慣です。もともとは花街の遊びだったようですが。いつのまにか庶民にも広がりました。
恵方巻きについてはこちらで詳しく書いています。
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