繁昌神社は京都で唯一「繁昌」の名を持つ神社です。
繁昌とはなんとも縁起のいい言葉です。でもそこには悲しいお話がありました。
京都市営地下鉄の四条駅を出るとそこはたくさんの車が行き交う烏丸通(からすまどおり)。
ゼネラル石油のある交差点・烏丸高辻を西に曲がると、片側一車線の道路(骨屋町)が伸びています。交差点から歩いて数分ほどで、ビルの合間にひっそりと佇む赤い建物を発見。繁昌神社です。
たぶん車で走っていたら見逃してしまうでしょう。京都は町を歩いてると突然神社仏閣が出て来る(もとからあったのですが)のであなどれません。
歩道ギリギリに立っている鳥居には「繁昌宮」の額がかかってます。
繁昌神社には繁昌宮、繁昌の宮ともいうそうです。
初めてくると「こんなに狭いの?」と思うかもしれません。小さな社ですが、たくさんのお店や会社の名前が入った提灯があります。商売の神様として信仰を集めているようですね。
境内にはろうそくを灯す場所があります。なんだかお寺みたいですね。
それもそのはず。繁昌宮は「京の弁財天」といわれる神社です。江戸時代には弁財天をお祀りする「功徳院」つまりお寺でした。
明治になって神仏分離で市杵島姫命をお祀りする神社になったのです。神仏習合で弁財天と市杵島姫命は同じ神様になっていたのでこのようなことになったのですね。
平安時代の56代清和天皇の御代。このあたりには藤原繁成の屋敷がありました。延喜年間(901年-922年)、邸宅内の池の中島に安芸の宮島から市杵嶋姫命、田心姫命、湍津姫命(宗像三神)をお迎えしたのが始まりだといわれます。市杵嶋姫命は弁財天と同じだと考えられていたので、
もともとは現在の社より北西にある班女塚のあたりにありました。
「未婚の女性がこの塚を訪れると結婚できない」といわれています。
班女伝説
「宇治拾遺物語」によると班女塚にはこんな伝説があるのです。
長門前司には二人の娘がいました。姉は結婚していましたが、妹は宮仕えをしていたので未婚でした。宮仕えを辞めたあとは家で暮らしていました。妹は結婚はしていませんでしたが、ときおり家に通う男性はいました。妹は27、8歳のころ病気で亡くなります。
家族は遺体を棺桶にいれて墓地に運びました。墓地についたので棺桶をあけたところ、遺体がありませんでした。家に帰ると妻戸口(家のつま(端)にある入口)に遺体が寝ています。もう一度遺体を墓地に運びましたが、またいつの間にか戻っていました。今度は遺体を動かそうと思っても大木のように動きません。
人々はここにとどまりたいのだろうと思って、床の板を剥がして遺体を埋めて塚を作りました。その後、家族は引っ越しして塚だけが残りました。
この女性が「班女」と呼ばれました。「半女」とも書かれ未婚女性のことだといわれます。
弁財天の別名・針才女(はりさいじょ)が訛って班女となったともいわれます。牛頭天王の妃・頗梨采女(はりさいじょ)という説もあいいます。
能に「班女」という謡曲がありますが長門前司の娘とは関係ないといわれます。ですが伝説と謡曲があわさって班女とよばれるようになったのかもしれません。
というわけで、未婚のまま亡くなった女性の伝説があるのですね。
もともとは破談の神様だった?
娘は結婚に対して執着があったようで、女性が塚の前を通ると縁談が破談になったといいます。
そのような伝説があるので当初は縁切り、破談の神様として信仰されていたようです。でも今では良縁の神様としても信仰されています。良縁を結ぶには、まずは悪い縁を断つことからということなのでしょう。
班女伝説のある神社ということで、班女神社と呼ばれていました。
江戸時代には繁昌神社にかわったということです。問屋の多い町だったこともあり、縁起のいい呼び方にかわったのでしょうね。やがて神社だけでなく神社のある一帯が繁昌町と呼ばれるようになりました。神社を中心に栄えた地域だったのでしょうね。
豊臣秀吉の時代には神社を移転しようとしましたが祟りがあったので移動できなかったといわれます。
班女塚
繁昌神社の横にあるビルの奥には班女塚があります。
未婚の女性が塚の前を通ると破談になるというあの塚です。
ちょっと奥まっているのでわかりづらいかも。
近寄ってみると、しめ縄のついた大きな石がありました。これが班女塚です。
現在は繁昌神社の奥の院として地元の方たちが守っています。
繁昌という縁起のいい名前の神社の歴史には悲しい物語があったのですね。
地元の人々に代々守られながら続いてきたとともに、人々も神社に守られていたのでしょう。
神社の情報
ご祭神 :宇迦之御魂神
参拝時間:
住 所 :京都府京都市下京区高辻通室町西入ル繁昌町308
アクセス
繁昌神社に行くのは電車が便利です。
駐車場:なし
電車
京都市営地下鉄 烏丸線 四条駅より徒歩で約5分。
阪急 京都線 烏丸駅より徒歩で約5分。
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