京都市右京区太秦には、三本の脚を持つ変わった鳥居があります。
その鳥居があるのは木嶋坐天照御魂神社(このしま にます あまてるみたま じんじゃ)。
名前が長いので木嶋神社とか、蚕の社 と呼ばれている神社。
その境内に三柱の鳥居があります。
御利益さんや御朱印集めしてるひとには、ちょっと(かなり?)近寄りがたい雰囲気のミステリアスな神社です。行くときは心してください。
木嶋坐天照御魂神社
木々にかこまれた境内を奥へ進むと拝殿があります。
森に囲まれて行き止まりの様に見えますが、拝殿の奥に本殿があります。
初めて来たら本当にあるのか不安になるかもしれません。
更に森の中に入っていきます。
拝殿を反対側から入り口を見るとこんな感じ。
木々に囲まれて薄暗くなります。
ありました。本殿です。
提灯の明かりが点いてるように、あたりは薄暗くなってます。
ここから後の画像はデジカメの感度を上げてとっています。
NIKON P7100。ISO感度400。露出補正+0.3。搾り時間1/15秒。
結界の石?
ここには狛犬がありません。
石灯篭の横には左右に同じくらいの大きさの石が置いてあります。
左右は同じくらい大きな石です。
狛犬のように本殿を守る役目をしているのでしょうか。
木嶋神社の創建は不明ですが、大宝元年(701年)にはすでにありました。推古天皇12年(604年)ころではないかという説もあります。京都で一番古い神社のひとつなんです。
この石は大昔の結界の形なのかもしれません。
木嶋神社本殿
奥に本殿があります。
提灯には、花付き双葉葵。松尾大社と同じです。
ここは松尾大社を造った秦氏ゆかりの神社なのです。
ご祭神は
・天之御中主神(あめの みなかぬし のかみ)
・大国魂神(おおくにたまのかみ)
・瓊々杵尊(ににぎのみこと)
・穂々出見命(ほほでみのみこと)
・鵜茅葺不合命(うがやふきあえずのみこと)
神社の名前は「木嶋坐天照御魂神社」。
木嶋にある天照御魂を祀る神社という意味。
天照御魂とは太陽を神格化したものですが。天照大御神とは別の神様です。
木嶋神社では天之御中主神の別名とされています。
他の天照御魂を祀る神社では天火明命(あめの ほあかりのみこと)の別名とされていることもあります。天火明命は瓊々杵尊の兄。
同じ秦氏が造った伯清稲荷には天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊(あまてる くにてる ひこ あめのほあかり くしたま にぎはや のみこと)。な、長い・・・略して天火明命と呼びます。が、祀られています。
最初は天火明命が祀られていたとする説もあります。
現在の木嶋神社では天之御中主神ということになってます。どちらも天の神様なので。
天の神、日月星の神を祀りたかった秦氏としてはどちらでも良かったのかもしれません。
本殿西側(左手)にあるのが八社。
一般の人は中にはいることはできません。
蚕養神社
本殿東(右手)にあるのが蚕の社といれる蚕養神社。
古代の聖地・元糺(もとただす)
木嶋神社の森は元糺の森といいます。
なんで、元糺なのかというと。
もともとは木嶋神社の森が「糺の森」と呼ばれていました。
でも、平安時代・嵯峨天皇の時代。潔斎・物忌みの場が木嶋神社から下鴨に移りました。そのとき下鴨神社の森が糺の森と呼ばれるようになったそうです。木嶋神社では元糺と呼んで区別するようになったということです。
元糺の池
本殿西側(左手)には、元糺の池と呼ばれる場所があります。
池には今は水はありません。かつてはここに水が湧いていたといいます。
古来、糺の池とは、水で身を洗って罪穢れをはらう場所。禊の場所なのです。
夏の土用の丑の日に、ここの池に足をつけて無病息災を祈る行事「足付け神事」が行われています。現在は水はありませんが祭事のときはここに水が入れられます。
下鴨神社の御手洗池の神事と似てますね。
この元糺の池の中にあの三柱の鳥居があるのです。
三柱の鳥居
竹垣で覆われた元糺の池に近寄って見ます。
元糺の池・上池に三柱の鳥居はあります。
聖地なので中に入ることはできません。
奥に見えてきました。
本当に柱が三本あります。見れば見るほど不思議な形ですね。なぜこのような形になっているのか謎です。
キリスト教とは関係ない
神社の由緒書きにもありますが、かつて(明治時代)はキリスト教の遺跡という説もありました。
キリスト教のネストリウス派が中国に伝わり景教と呼ばれました。大陸から渡ってきた秦氏が景教を伝えその遺跡として建てたという説があります。でも、秦氏が来たのは中国に景教が伝わる前。秦氏がネストリウス派キリスト教徒だったとは考えられません。
三本柱がなぜキリスト教と関係あるのと言われたのかというと「三位一体説」を表現しているから。らしいです。
ところが三位一体説を発明したのはネストリウス派とは違うアタナシウス派。ネストリウス派を弾圧してローマから追い出した宗派です。
アタナシウス派はカトリック、正教、プロテスタントのもとになった宗派です。そのため現在では三位一体説=キリスト教の教えみたいに思われています。
ところが古代にはキリスト教にもいくつかの派閥があって、三位一体説を採用していないキリスト教の宗派もありました。ネストリウス派も三位一体説を採用していません。
だから仮に景教の信徒が日本に来ていたとしても「三位一体説のシンボルとして三本柱を建てた」なんてことはありえないわけです。自分たちを弾圧した宗派のシンボルを作るはずがありません。
というより、多神教の神道と一神教のキリスト教ではぜんぜんなじまないと思います。
“京都の「ご利益」徹底ガイド”,PHP出版 に宮司さんの話が紹介されています。
西方山地と扇状地に振った雨が地下水になりこの地に湧き出した。その水で豊かな森が生まれ、いつしか木の嶋と呼ばれるようになった。人々は森中に湧く命の根源たる泉を神として祭祀した。泉を四方から拝するために奇妙な形の鳥居が建立された。
出典:京都の「ご利益」徹底ガイド
神の座する場所を守るために鳥居が立てられているんですね。
鳥居の中心には石が積み上げられています。かつては石のあるあたりから水が湧いていたそうです。神のいる場所を守るために囲いをすることはありますが、鳥居で囲うというのは珍しいです。
石を積み上げたものは「神の座」。つまり「磐座」です。宇宙の神である「天之御中主神」が降り立つ場所ということで、宇宙の中心を意味するといわれます。
現在の鳥居は1831年に再建されたもの。それ以前は木でできていました。
現在日本にある三柱の鳥居は7基とも言われます。その中でも、木嶋神社の鳥居は最も古いものです。
木嶋神社の三柱の鳥居は京都三鳥居の一つになってます。
なんとも不思議なところです。いろいろ想像を掻き立てられます。
木嶋神社は境内全体が静まり返ってはいるけど、おさえ込むような感じを受けますね。
街中に突然現れる魔界と呼ぶにふさわしい場所だと思います。
場合によっては気味が悪いとか怖いと思う人もいるかもしれません。
暗いところや人気のない社が苦手な人はできるだけ天気のいい日や、太陽の高い時間帯を選んで行くといいと思います。
とはいっても、太秦地区の氏神様なので怖い神様じゃない(はず)です。
ご利益めぐりや、御朱印コレクションもいいですが。
ミステリアスな場所に出会うのも神社仏閣めぐりの醍醐味ですね。
木嶋神社境内の記事はこちらにもあります
木嶋神社へのアクセス
・京福電車
嵐山線(嵐電)蚕の社下車。境内入り口まで徒歩4分。
・京都市営地下鉄
東西線 太秦天神川下車。境内入り口まで徒歩7分。
京都駅から行く場合
歩く距離は少し長くなりますが、地下鉄を乗り継いだほうが便利。
地下鉄烏丸線・京都駅 > 烏丸御池下車 東西線に乗り換え
地下鉄東西線 烏丸御池 > 太秦天神川下車
住所 京都府京都市右京区太秦森ケ東町50-1
参考書籍
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