ニーケー(Nīkē)は、ギリシア神話の 勝利の女神。
よく「勝利の女神」なんて言い方をしますよね。でも漠然としていて「どの神様なんだろう?」と思うことはありませんか?
勝利の女神はもともとヨーロッパで信じられていた神様。ギリシャ神話やローマ神話に登場。実際に古代ギリシャや古代ローマでは戦士や競技者を守る神様として信仰されていました。
ギリシャでは勝利の女神はニーケーといいます。
日本語では「ニケ」と表現することが多いです。
ローマ神話のウィクトーリア (Victōria)と同じ神とされることもあります。
漠然と勝利の女神と言われることの多いニケ。
どのような神様なのか紹介します。
勝利の女神ニケとは
ニケは翼を持った女神
ニケは翼を持った女神の姿で表現されます。古代ギリシャの神々には古い時代には翼をもつ神がいましたが、時代が新しくなると翼を持つ神が減りました。でも勝利の女神ニーケーや暁の女神エーオース、虹の女神イーリスなど、翼を持つ神はいました。
翼を持った神としての姿は、ローマ神話のウィクトリア(こちらも勝利の女神)に引き継がれました。ローマ帝国でキリスト教が信仰されるようになると、翼の生えた姿が天使のモデルになりました。それまでのユダヤ教や原始キリスト教の天使は戦士の姿で表現され翼はついてなかったのです。
私達に馴染みのある翼のある天使の姿はギリシャ・ローマ神話の女神の姿がモデルなんですね。
ニケの外観の特徴はそれだけではありません。
身体は石膏のように白く。
翼は雪のように白く。
髪は火のように燃える黄金色。
といわれます。
ニケの家族
ニケはティターン神族。ティターンは巨神族ともいいます。
ゼウスたちオリュンポスの神々よりも古い世代の神々です。
父:パラース
ティターン族
母:ステュクス(黄泉の川)
ティターン神族のオケアノス(海の神)とテテュスの娘。
ティターン神族とオリュンポス神族の戦い(テイタノマキア)ではゼウスと仲の良かったステュクスはオリュンポス神族に味方しました。オリュンポス神族が勝った時、ゼウスはステュクスに褒美は何がよいか聞いたところ。ステュクスは黄泉の国タルタロスを流れる一番大きな川を求め、最も神聖な誓いをたてるときはその川の水を使うことを要求。ゼウスはステュクスの要求を認めました。それ以来、ステュクスは黄泉の川の守護神になり。川そのものもステュクスと呼ばれました。神々が誓いをたてるときは使者の神イリスが黄泉の国までやってきて水を汲んで帰ります。
兄弟
ゼーロス(鼓舞)、クラトス(強さ)、ビアー(力)
古い神々のティターン神族と新しい神々のオリュンポス神族が戦った時(テイタノマキア)のことです。
ゼウスに味方した
ニケはティターン神族でしたが、母ステュクスの命令でオリュンポス側に味方しました。ゼウスはニケを戦車(チャリオット)を担当しました。
オリュンポス側が勝ったあと。ニケはゼウスから称賛され、オリュンポスの神々の一員に加わりました。
ニケの役割
主神ゼウスや十二神の一柱アテナの使者となりました。
ニケは戦場を駆け巡り、勝者を選んで栄光と勝利を与えます。
ニケは勝者の前だけでなく、戦場で死にゆくものの前にも現れると言います。意識が朦朧とする兵士の前に美しい幻となって現れるのです。
でもニケが直接勝者を選んでいるわけではなく、もっと上位の神が決めていると言われます。ゼウスやアテナが決めているのでしょう。
北欧神話(ゲルマン神話)には戦士の魂を神の世界に連れて行くワルキュリアがいます。ワルキュリアは羽をもつ女性の姿で表現されます。ニケはワルキュリアのような役目ももっているのかもしれません。
ニケの活躍の場は戦場だけでありません。
運動競技の場でも進行されます。競技者に勝利と栄光を運んで来るのです。
そのため古代ギリシャでは神殿や様々な施設にニケの像や彫刻が作られました。月桂樹の冠やヤシの葉を持った姿でデザインされています。月桂樹の冠(月桂冠)は勝者に贈られる冠ですし、ヤシの葉も勝利の象徴です。現代のオリンピックで渡されるビクトリーブーケのようなものです。
ゼウスやアテナの神殿にもニケの祭壇が作られました。ギリシャではコインにもニケがデザインされました。
ニケの像
ギリシャでは非常に人気のある女神でした。
そのため現代においくつかの彫像や彫刻が残っています。
有名なのが「サモトラケのニケ」とよばれる彫像。サモトラケ島で発見されたたのでこの名があります。すでに頭と腕は失われていますが、ヘレニズム時代の傑作と言われています。
現在はルーブル美術館に展示されています。
人間と比べても大きな像だとわかります。
とても有名な像です。
アテナ神殿ではアテナの像の手のひらに乗っていることもありました。
現代でも欧米ではアテナとともにニケの像が飾られることがあります。
こんな感じです。
アテナの手のひらに乗っているのがニケです。
アテナってどれだけ巨大な神だったのか?って思いますよね。
実際の大きさの比較ではなくてイメージなのでしょう。
これはミニチュアの像ですが。
ウィーンには大きな像が造られています(アイキャッチの画像はウィーンのものです)
オリンピックのメダルにも
1896年に近代オリンピックが始まり。夏季は2020東京大会(実施されたのは2021年)まで100年以上続く平和の祭典。
オリンピックでは1位から3位にはメダルが授与されています。
1回大会から2020東京大会までメダルのデザインには多くのメダルに勝利の女神ニケがデザインされています。
とくに夏季大会はメダルのデザインには規定があって。表面には勝利の女神ニケを入れることになっています。
これは2016年リオのデザインのイメージですが。2004年から使われているデザイン。表面は2020東京大会もほぼ同じです。
表面は正面に羽を広げたニケ、背景にパナティナイコスタジアム、奥にパルテノン神殿がデザインされています。
勝利の女神ニケは古代ギリシャ時代から勝利の女神として信仰されていました。
古代ギリシャでは運動競技の選手の守護神としても信仰されました。オリンピック競技とも非常に縁が深いのです。
スポーツメーカーの社名も
ニケは英語ではナイキ(Nike)といいます。
どこかで聞いたことありませんか?
スポーツ用品メーカーのナイキ(NIKE)ですね。
もちろん名前は勝利の女神「NIKE」からとっています。
トレードマークは「女神の翼」をイメージしているようです。
英語圏にはギリシャ・ローマ神話由来の企業名・ブランド名も多いんですよね。
確かに勝利の女神はスポーツ用品にぴったりですね。
古代ギリシャで信仰されていた勝利の女神ニケは現代でも様々な所で人々に親しまれているようです。
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